社労士内田の徒然日記

社会保険労務士の内田が日々の仕事やプライベートなど何でも書き込むブログです。

2015年02月

最近、立て続けに個人の依頼者から「傷病手当金」についての相談がありました。
少し整理して説明します。

まず、日本では皆、何らかの医療保険制度に加入しています。
1955年頃まで、農業や自営業者、零細企業従業員を中心に国民の約3分の1に当たる約3,000万人が無保険者で、社会問題となっていました。

しかし、1958年に国民健康保険法が制定され、61年に全国の市町村で国民健康保険事業が始まり、「誰でも」「どこでも」「いつでも」保険医療を受けられる体制が確立しました。

これを「国民皆保険制度」といいます。

公的な医療保険は大きく二つに分けられます。

一つは会社員が加入する「健康保険」、公務員の「共済保険」、船員の「船員保険」のように、組織に雇用されている人を対象とする「被用者保険」であり、もう一つは、自営業者や被用者保険の退職者などを対象とした「国民健康保険」です。
※その他75歳以上の高齢者を対象とした「後期高齢者医療制度」や健康保険事業を公法人で行う「健康保険組合」、同種の事業・業務の従事者を組合員として組織される団体「国民健康保険組合」などがあります。

一般的な会社員が加入する「健康保険」には以下のように様々な給付があり、その中の一つが「傷病手当金」です。

被保険者に対する給付(保険料を収めている本人)   
①療養の給付 
②入院時食事療養費   
③入院時生活療養費 
④保険外併用療養費   
⑤療養費
⑥訪問看護療養費   
⑦移送費   
⑧高額療養費
⑨高額介護合算療養費
⑩傷病手当金   
⑪埋葬料(費) 
⑫出産育児一時金 
⑬出産手当金 

被扶養者に対する給付(保険料を収めている人が扶養している者)   
①家族療養費 
②家族訪問看護療養費 
③家族移送費
④高額療養費 
⑤高額介護合算療養費
⑥家族埋葬料 
⑦家族出産育児一時金 


「傷病手当金」は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

■支給される条件(次の①から④の条件をすべて満たす事が必要)
①業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
健康保険給付として受ける療養に限らず、自費で診療を受けた場合でも、仕事に就くことができないことについての証明があるときは支給対象となります。また、自宅療養の期間についても支給対象となります。ただし、業務上・通勤災害によるもの(労災保険の給付対象)や病気と見なされないもの(美容整形など)は支給対象外です。

②仕事に就くことができないこと
仕事に就くことができない状態の判定は、療養担当者の意見等を基に、被保険者の仕事の内容を考慮して判断されます。

③連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
業務外の事由による病気やケガの療養のため仕事を休んだ日から連続して3日間(待期)の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。待期には、有給休暇、土日・祝日等の公休日も含まれるため、給与の支払いがあったかどうかは関係ありません。また、就労時間中に業務外の事由で発生した病気やケガについて仕事に就くことができない状態となった場合には、その日を待期の初日として起算されます。

④休業した期間について給与の支払いがないこと
業務外の事由による病気やケガで休業している期間について生活保障を行う制度のため、給与が支払われている間は、傷病手当金は支給されません。ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されます。
※任意継続被保険者である期間中に発生した病気・ケガについては、傷病手当金は支給されません。

■支給される期間
傷病手当金が支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月です。これは、1年6ヵ月分支給されるということではなく、1年6ヵ月の間に仕事に復帰した期間があり、その後再び同じ病気やケガにより仕事に就けなくなった場合でも、復帰期間も1年6ヵ月に算入されます。支給開始後1年6ヵ月を超えた場合は、仕事に就くことができない場合であっても、傷病手当金は支給されません。

■支給される傷病手当金の額
傷病手当金は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が支給されます。標準報酬日額は、標準報酬月額の30分の1に相当する額(10円未満四捨五入)です。給与の支払があって、その給与が傷病手当金の額より少ない場合は、傷病手当金と給与の差額が支給されます。
(例)標準報酬月額300,000円(標準報酬日額=10,000円)の場合 1日につき10,000円×3分の2=6,667円(50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は切り上げる)

■資格喪失後の継続給付について
資格喪失の日の前日(退職日等)まで被保険者期間が継続して1年以上あり、被保険者資格喪失日の前日に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態(①②③の条件を満たしている)であれば、資格喪失後も引き続き支給を受けることができます。ただし、一旦仕事に就くことができる状態になった場合、その後更に仕事に就くことができない状態になっても、傷病手当金は支給されません。

■傷病手当金が支給停止(支給調整)される場合
・傷病手当金と出産手当金が受けられるとき
・資格喪失後に老齢(退職)年金が受けられるとき
・障害厚生年金または障害手当金が受けられるとき
・労災保険の休業補償給付が受けられるとき


長いサラリーマン生活、病気やケガになることもありますし、最近ではメンタル不調による休職も増えています。

冒頭で説明した医療保険制度全てに所得保障である「傷病手当金」が支給されるわけではありませんが、被用者保険では支給されますので、何かあった時のために概要だけでも押さえていただければと思います。

デリケートな内容を含む場合もありますので、詳しくは守秘義務のある専門家、当事務所までお気軽にご相談ください。
(2015/2/18現在の法令による)

「社員を関連会社に出向させたいが、どういう手順が必要になるのか法律上のルールを教えてほしい。」という質問をいただきましたので、ご説明します。

まず出向には2種類あり、出向元に籍(社員としての身分)を残したまま出向先で労働するいわゆる「在籍出向」と、出向元の雇用契約を解除(退職)し、出向先のみの社員としての身分を有する「転籍出向」とあります。
一般的に前者を「出向」、後者を「転籍」といいます。

従来、出向や転籍については、グループ企業内の人事交流や人材育成、技術的な指導等を目的で行なわれるのが一般的でしたが、最近は余剰人員の整理や雇用調整を目的とするものが増えてきました。

ここで、法律上どういった注意が必要か挙げてみます。

■出向が行える条件について
「出向」の場合、就業規則に「出向を命じることがある」といった規定を設けていれば、社員から同意を得なくても、命じることができます。

出向元での労働契約を維持しながら、出向先の使用者の指揮下に入るので、労働者は出向元と出向先の両方で労働契約を締結していることになります。

ただし、その出向が権利の濫用(制裁など不当な目的がある、社員の不利益が大きい)に当たる場合は認められません。

「権利の乱用と解釈された例」
・寝たきりの身体障害者の両親と同居し生活の面倒をみている労働者への出向命令は人事権の濫用にあたる。(日本ステンレス事件 新潟地裁高田支部 昭和61.10.31)

・夜勤中心職場への異職種出向命令は、仕事上・私生活上の不利益が著しく、人選の合理性がなく人事権濫用にあたる。(JR東海事件 大阪地裁 昭和62.11.30 )

・出向期間・出向元への復帰保証等を明らかにしないままの零細赤字工場への出向命令は人事権の正当な行使ではない。(一畑電気鉄道事件 松江地裁 昭和48.4.8)

・関連企業への包括合意はあったが、車両係・運転士等を清掃業務・運搬業務などへ出向命令した。出向先での職務が従前の職務とは著しく異なり、そのような出向につき申請人らを人選したことの合理的理由も示されていないので権利濫用として無効であるとされた。(JR東海事件 昭和62.11.30 大阪地裁)

「転籍」の場合、元の会社を退職し、出向先のみで労働契約を締結という完全に身分が変わってしまう重大なものなので、出向のように就業規則に規定しているだけでは不十分となります。
したがって、社員から同意を得られなければ、転籍させることはできません。

■就業規則の整備について
「転籍」については、完全に籍が移ってしまうので、労働条件の見直しは当然の事ですが、「出向」の場合も出向先の就業規則、出向元の就業規則のどちらが適用されるか出向協定書や出向規程の整備が必要となります。

具体的には、

①出向元の就業規則が適用
•退職、解雇

②出向先の就業規則が適用
•労働時間、休憩、休日
•服務規律
•安全衛生

③出向元・出向先両方の就業規則が適用
•福利厚生関係
•懲戒処分
※出向先の懲戒処分を適用する場合は、出向元の就業規則にその旨を明確に定めておくことが必要です。ただし、懲戒解雇については労働者の身分を失わせることになるので、出向元に復帰させて出向元で行うことになります。いずれにせよ懲戒については、出向元で出向元の就業規則に基づいて行うことは可能ですが、厳密に取り決めが必要です。

④出向協定書(出向元・先、労働者)での取決めによる
•賃金の支払 (出向元・先が全額負担、どちらか一部負担等)
•休職
•休暇

■社会保険について

・労災保険は出向先で適用(昭35.11.2基発第932号)
・雇用保険は主たる雇用関係のある方で適用(通常、賃金の支払いのある方)
・健康保険と厚生年金保険については賃金の支払いのある方


「出向」、「転籍」については当初労働者が想定している労働条件から大きく変わる可能性があります。
重要なのは出向元・先、労働者の責任の範囲を明確に書面に残し、3者できっちり合意をとること。また、出向労働者のモチベーションが下がらないように十分な配慮を行うことが重要となります。

ドラマ「半沢直樹」では、「出向=地獄行き」のように描かれてしまっていましたが、メガバンクともなれば余剰人員はそういう扱いを受けるのでょうか。何とも貴重な労働力を...。

出向社員への対応相談や規程の整備が必要な場合は、当事務所までご相談ください。

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先日、実家でネコを飼い始めました。
名前は野良猫だから「ノコ」。何とも浅はかです。

ほぼ死にかけの状態で奥さんが拾ってきたのを、私の両親が飼う事に。
来た時は、瀕死の状態で、立ち上がる事も餌を食べる事もできません。

病院につれて行きましたが、股関節の骨折、心臓肥大、腎臓が1つ機能していないなど、満身創痍の状態。
両親が必死に看病と通院を繰り返し、股関節は手術して何とか生きられるようにはなりました。

お医者さんから「長く生きられるかどうか…」とも言われています。
それでも今ではすっかり元気になり、力いっぱい遊んでいます。

「一生懸命生きること。」
小さなノコに教えてもらいました。

いつまで生きられるか分かりません。精一杯みんなでかわいがろうと思います。
ガンバレッ!
ねこ

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