先日、ある社長さんから
「何度注意してもミスばかりする従業員が居る。先生、そういうやつの給料減額できないの?」という相談がありました。
確かに何度言ってもミスが減らない従業員さんは居ると思います。
そこで、法律上のルールを説明します。

まず、以前ここのブログでも紹介させていただきましたが、賃金支払には基本的な5原則ルールというものがあります。
http://office-uchida.blog.jp/archives/6545089.html(賃金支払の5原則について①)
http://office-uchida.blog.jp/archives/2014-05-14.html(賃金支払の5原則について②)

その中に「全額払の原則」というのがあり、法令や労使協定で定められた事理明白なものでなければ、勝手に給与から控除する事はできません。
この原則は、労働者に給料を確実に受領させ、労働者の日常生活に不安がないようにするための原則ですので、ミスが多いという理由だけで賃金を減額する事は、労働基準法に抵触してしまいます。

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」(労働基準法 第24条1項)

ならば、懲戒処分としての減額はどうでしょうか?

懲戒とは、職場の秩序を乱した者に対し、職場の秩序を維持するために行う制裁です。

懲戒処分が有効となるためには、就業規則に定められている懲戒事由に該当しなければなりません。
「だったら就業規則に「勤務成績が著しく不良のとき」と定めて減給事由に該当させればいいじゃん。」と思うかもしれませんが、人間は誰でもミスをします。

しかし、そのミスが誰もが懲戒が相当と認めるような理由がある場合のみ懲戒処分は許されます。
判例でも、懲戒が相当と認められる場合はほとんど限られてきます。

前述した通り、そもそも懲戒は職場の秩序を維持するための手段です。
誰でもやりかねないミスに制裁を加えても職場の秩序は保たれないでしょう。

また、たとえ懲戒処分が妥当と認められたとしても「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない」旨定め、ついで「減給額の総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない」(労働基準法 第91条)と、減給処分に対して2重の制限をかけています。

残念ですが、懲戒処分による減給も非常にハードルが高いと言えます。


人間ですので、個々の能力に差があるのは如何ともしがたい事実です。

懲戒処分云々よりは、人事評価制度の設計や人員配置、賞与査定基準などをきちっと作成し、優秀な人は評価し、能力の低い人は教育訓練を実施するなどの方法をとる事が会社のためになるのではないでしょうか。

人事評価制度や賃金制度の設計・変更などお気軽に当事務所までご相談ください。

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久しぶりにブログを更新しました。

年度更新、算定基礎届のシーズンも終わり、われわれ社労士は少しホッとする季節です。

先日、社労士仲間と大阪で開催された「就業規則サミット2015」という研修に参加してきました。

これからの日本は労働人口がどんどん減少し、人手不足が深刻な社会問題となります。
今のうちに「多様な正社員」制度を社内規程に盛り込み、優秀な人材を確保しないと会社の死活問題となります。

具体的には地域限定正社員、勤務地限定正社員、勤務時間限定正社員 等々...。

しっかり制度設計に備えて勉強しようと思います。
大阪研修