「社員を関連会社に出向させたいが、どういう手順が必要になるのか法律上のルールを教えてほしい。」という質問をいただきましたので、ご説明します。

まず出向には2種類あり、出向元に籍(社員としての身分)を残したまま出向先で労働するいわゆる「在籍出向」と、出向元の雇用契約を解除(退職)し、出向先のみの社員としての身分を有する「転籍出向」とあります。
一般的に前者を「出向」、後者を「転籍」といいます。

従来、出向や転籍については、グループ企業内の人事交流や人材育成、技術的な指導等を目的で行なわれるのが一般的でしたが、最近は余剰人員の整理や雇用調整を目的とするものが増えてきました。

ここで、法律上どういった注意が必要か挙げてみます。

■出向が行える条件について
「出向」の場合、就業規則に「出向を命じることがある」といった規定を設けていれば、社員から同意を得なくても、命じることができます。

出向元での労働契約を維持しながら、出向先の使用者の指揮下に入るので、労働者は出向元と出向先の両方で労働契約を締結していることになります。

ただし、その出向が権利の濫用(制裁など不当な目的がある、社員の不利益が大きい)に当たる場合は認められません。

「権利の乱用と解釈された例」
・寝たきりの身体障害者の両親と同居し生活の面倒をみている労働者への出向命令は人事権の濫用にあたる。(日本ステンレス事件 新潟地裁高田支部 昭和61.10.31)

・夜勤中心職場への異職種出向命令は、仕事上・私生活上の不利益が著しく、人選の合理性がなく人事権濫用にあたる。(JR東海事件 大阪地裁 昭和62.11.30 )

・出向期間・出向元への復帰保証等を明らかにしないままの零細赤字工場への出向命令は人事権の正当な行使ではない。(一畑電気鉄道事件 松江地裁 昭和48.4.8)

・関連企業への包括合意はあったが、車両係・運転士等を清掃業務・運搬業務などへ出向命令した。出向先での職務が従前の職務とは著しく異なり、そのような出向につき申請人らを人選したことの合理的理由も示されていないので権利濫用として無効であるとされた。(JR東海事件 昭和62.11.30 大阪地裁)

「転籍」の場合、元の会社を退職し、出向先のみで労働契約を締結という完全に身分が変わってしまう重大なものなので、出向のように就業規則に規定しているだけでは不十分となります。
したがって、社員から同意を得られなければ、転籍させることはできません。

■就業規則の整備について
「転籍」については、完全に籍が移ってしまうので、労働条件の見直しは当然の事ですが、「出向」の場合も出向先の就業規則、出向元の就業規則のどちらが適用されるか出向協定書や出向規程の整備が必要となります。

具体的には、

①出向元の就業規則が適用
•退職、解雇

②出向先の就業規則が適用
•労働時間、休憩、休日
•服務規律
•安全衛生

③出向元・出向先両方の就業規則が適用
•福利厚生関係
•懲戒処分
※出向先の懲戒処分を適用する場合は、出向元の就業規則にその旨を明確に定めておくことが必要です。ただし、懲戒解雇については労働者の身分を失わせることになるので、出向元に復帰させて出向元で行うことになります。いずれにせよ懲戒については、出向元で出向元の就業規則に基づいて行うことは可能ですが、厳密に取り決めが必要です。

④出向協定書(出向元・先、労働者)での取決めによる
•賃金の支払 (出向元・先が全額負担、どちらか一部負担等)
•休職
•休暇

■社会保険について

・労災保険は出向先で適用(昭35.11.2基発第932号)
・雇用保険は主たる雇用関係のある方で適用(通常、賃金の支払いのある方)
・健康保険と厚生年金保険については賃金の支払いのある方


「出向」、「転籍」については当初労働者が想定している労働条件から大きく変わる可能性があります。
重要なのは出向元・先、労働者の責任の範囲を明確に書面に残し、3者できっちり合意をとること。また、出向労働者のモチベーションが下がらないように十分な配慮を行うことが重要となります。

ドラマ「半沢直樹」では、「出向=地獄行き」のように描かれてしまっていましたが、メガバンクともなれば余剰人員はそういう扱いを受けるのでょうか。何とも貴重な労働力を...。

出向社員への対応相談や規程の整備が必要な場合は、当事務所までご相談ください。

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先日、実家でネコを飼い始めました。
名前は野良猫だから「ノコ」。何とも浅はかです。

ほぼ死にかけの状態で奥さんが拾ってきたのを、私の両親が飼う事に。
来た時は、瀕死の状態で、立ち上がる事も餌を食べる事もできません。

病院につれて行きましたが、股関節の骨折、心臓肥大、腎臓が1つ機能していないなど、満身創痍の状態。
両親が必死に看病と通院を繰り返し、股関節は手術して何とか生きられるようにはなりました。

お医者さんから「長く生きられるかどうか…」とも言われています。
それでも今ではすっかり元気になり、力いっぱい遊んでいます。

「一生懸命生きること。」
小さなノコに教えてもらいました。

いつまで生きられるか分かりません。精一杯みんなでかわいがろうと思います。
ガンバレッ!
ねこ