年次有給休暇は労働者の当然の権利です。請求された時季に与えなければなりません。
いわゆる労働者側の時季指定権です。

しかし、「事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。」(労働基準法 第39条5項)と規定されています。
いわゆる会社側の時季変更権です。

ここで問題となるのは、「正常な運営を妨げる場合」とはどういった場合を指すかです。

仮にある労働者から急に「明日、休みます。」と申し出があったとします。
繁忙期の会社側(上司)は、「この忙しい時に何を言っている。ダメダメ、来週にしろ。」と、拒否したとします。これは、法的に問題となるのでしょうか。

結論から申しますと、違法となります。

最高裁の判例でも「代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められる場合、「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当しない。」(弘前電報電話局事件 昭和62年7月10日 最高裁)としています。

つまり、その労働者が休むと会社側が損害を被ってしまうなどの相当な理由がなければ、認められません。
「繁忙期」という理由だけでは、認められないのです。

また、前述した通り、年次有給休暇は労働者の当然の権利です。
労働者の一方的な権利であり、上司の承認や許可は一切必要なく、休暇の理由によって拒否することもできません。

実は、年次有給休暇について労使間でのトラブルは非常に多いのです。
これは部下だった労働者が、コンプライアンスについて十分理解していないまま管理職になってしまったためである事も原因にあります。

ここで重要となってくるのは
・年次有給休暇が労働者の当然の権利と知ること
・権利と知った上で、時季変更の交渉をすること

要はコンプライアンスを意識し、言い方に気を付けるだけなのですね。

「そんな事言っても俺の若い頃は、有給休暇なんて簡単にとれなかったよ!」という声が聞こえてきそうですね。
でも、行政官庁や裁判所にとってはそんなことは関係ありません。

トラブルを未然に防ぐためにも、管理職のコンプライアンス教育は非常に重要になってきます。

管理職教育をお考えの際は、是非、当事務所までご相談ください。